$S(O',\phi)\circ S(O,\theta)=\begin{cases}S(O'',\theta +\phi)& \theta +\phi \neq 360^{\circ}\\T(2\overrightarrow{v})&\theta+\phi =360^{\circ}
\end{cases}$
であり,回転移動変換と平行移動変換の合成は回転移動変換であるから,$n$個の回転移動変換の合成について次の命題が成り立つ.(平行移動変換と回転移動変換の合成が回転移動変換になることは次の章で述べる.)
命題3-1
$n$個の回転移動変換
$R(O_1,\theta _1),R(O_2,\theta _2),\cdots,R(O_n,\theta _n)$
がある.
このとき次が成り立つ.
(1)$\theta_1+\theta_2+\cdots+\theta_n \neq 360^{\circ}\times n$ ($n$は整数)のとき
$R(O_n,\theta_n)\circ \cdots \circ R(O_1,\theta _1)$
は回転角$\theta_1+\cdots+\theta_n$の回転移動変換である.
(2)$\theta_1+\theta_2+\cdots+\theta_n = 360^{\circ}\times n$ ($n$は整数)のとき
$R(O_n,\theta_n) \circ \cdots \circ R(O_1,\theta _1)$
は恒等変換か平行移動である.
命題3-1で合成変換の回転の中心や平行移動を定めるベクトルを求めることは簡単でない.実際には点の像を調べ不動点を見つけることになる.
ここでは,
$R(P,\psi)\circ R(B,\phi)\circ R(A,\theta), \ \ \ (0^{\circ} < \theta ,\phi ,\psi < 360^{\circ})$
で
$\theta +\phi +\psi =360^{\circ}$
の場合を調べる.
$R(B,\phi)\circ R(A,\theta)$
は回転移動変換で回転の中心は,
$\triangle ABC$の頂点$C$を$ABC$を負の向き(時計回り)かつ
$\angle A=\dfrac{\theta}{2},\angle B=\dfrac{\phi}{2}$
と定めるとき頂点$C$である,
一方,
$R(B,\phi)\circ R(A,\theta)=R(C,\theta+ \phi)$
$\theta +\phi +\psi =360^{\circ}$
より
$R(P,\psi)\circ R(B,\phi)\circ R(A,\theta)= I$(恒等変換)
となるのは点$P$が点$C$のときである.
まとめると次のようになる.
命題3-2
$A,B,C$は互いに異なる3点で,3つの回転移動変換
$R(A,\theta),R(B,\phi),R(C,\psi), \ \ (0 < \theta,\phi ,\psi < 360^{\circ})$
が$\theta +\phi +\psi =360^{\circ}$を満たすとき次が成り立つ.
$R(C,\psi)\circ R(B,\phi)\circ R(A,\theta )=I(恒等変換)$
$\Leftrightarrow$
$\triangle ABC$は$A,B,C$がこの順に負の周りで(時計回り),かつ
$\angle A=\dfrac{\theta}{2},\angle B=\dfrac{\phi}{2},\angle C=\dfrac{\psi}{2}$
命題3-2は回転角は正としている.もし負の時は$360^{\circ}$を加えて正にする.
$\triangle ABC$が$A,B,C$がこの順に負の周りの時
$R(C,2\angle C)\circ R(B,2\angle B)\circ R(A,2\angle A)=I$(恒等変換)
が成り立つことは,回転移動変換を辺の対称移動変換の合成とみて
$R(C,2\angle C)\circ R(B,2\angle B)\circ R(A,2\angle A)$
$=S(CA)\circ S(CB)\circ S(BC)\circ S(BA)\circ S(AB)\circ S(AC)=I$
としてもよい.
$\triangle ABC$が$A,B,C$がこの順に正の向き(時計回り)のとき
$R(C,2\angle C) \circ R(B,2\angle B) \circ R(A,2\angle A)$
が恒等変換にならないことを確認しよう.
正三角形$\triangle ABC$で考えると分かりやすい.
$R(C,120^{\circ}) \circ R(B,120^{\circ}) \circ R(A,120^{\circ})$
による$A,B$の像を調べてみよう.
$A \mapsto A \mapsto P \mapsto P'$
$B \mapsto Q \mapsto Q' \mapsto Q''$
でともに不動点でない.
もちろん,恒等変換でなければ平行移動であるから
$\overrightarrow{AP'}=\overrightarrow{BQ''}$
になっている.
三角形がこのように左回りのときは,
$R(C,-120^{\circ}) \circ R(B,-120^{\circ}) \circ R(A,-120^{\circ})$・・・@
が恒等変換になっている.
さらに,$-120^{\circ}$は$240^{\circ}$であるから,@は
$R(C,240^{\circ}) \circ R(B,240^{\circ}) \circ R(A,240^{\circ})$
が恒等変換と書くこともできる.したがって,次のことが成り立つ.
命題3-3
$\triangle ABC$の内角を
$\angle A=\alpha,\angle B=\beta,\angle C=\gamma$
とおく.ただし,$\alpha,\beta,\gamma$は向きは考えず正とする.
このとき,次が成り立つ.
3点A,B,Cが右回り(時計回り)のとき
$R(C,2\gamma) \circ R(B,2\beta) \circ R(A,2\alpha)$
は恒等変換で
3点A,B,Cが左回り(反時計回り)のとき
$R(C,-2\gamma) \circ R(B,-2\beta) \circ R(A,-2\alpha)$
は恒等変換である.
例題3-1(ナポレオン三角形)
三角形の外側に正三角形を作り,その中心をそれぞれ$O_1,O_2,O_3$とする.このとき$\triangle O_1O_2O_3$
は正三角形である.
証明
三角形を$\triangle ABC$とし,外側に作った正三角形を$\triangle PCB,\triangle QAC,\triangle RBA$,その中心を
それぞれ$O_1,O_2,O_3$とする.
$A\stackrel{R(O_2,120^{\circ})}{\longmapsto}C\stackrel{R(O_1,120^{\circ})}{\longmapsto}B\stackrel{R(O_3,120^{\circ})}{\longmapsto}A$
$R(O_3,120^{\circ})\circ R(O_1,120^{\circ})\circ R(O_3,120^{\circ})$
は$120^{\circ}+120^{\circ}+120^{\circ}=360^{\circ}$より,平行移動変換か恒等変換である.一方$A$が不動点であるから恒等変換.したがって,命題3-2より$\triangle O_2O_1O_3$は正三角形である.(証明終わり)
例題4-1で用いた図形から多くの内容が分かる.いろいろな問題2回転移動問題9の解説参照.フェルマ点を調べてもよい.
例題3-1を一般の四角形に拡張しよう.
四角形の外側に正方形を作り,その中心をそれぞれ$O_1,O_2,O_3,O_4$とする.(右図は正方形は省略している)
このとき
$A\stackrel{R(O_4,90^{\circ})}{\longmapsto}D\stackrel{R(O_3,90^{\circ})}{\longmapsto}$
$C\stackrel{R(O_2,90^{\circ})}{\longmapsto}B\stackrel{R(O_1,90^{\circ})}{\longmapsto}A$
より
$R(O_4,90^{\circ})\circ R(O_3,90^{\circ})$ $\circ R(O_2,90^\circ)\circ R(O_1,90^{\circ})=I$
したがって,$R(O_1,90^{\circ})\circ R(O_2,90^{\circ})$と$R(O_3,90^{\circ})\circ R(O_4,90^{\circ})$の回転の中心は同じ点でその点を$O$
とすると,$\triangle OO_1O_2,\triangle OO_3O_4$は共に直角二等辺三角形.
$\triangle OO_3O_1$を$90^{\circ}$回転したのが$\triangle OO_4O_2$であるから
$O_1O_3=O_2O_4,O_1O_3\perp O_2O_4$
4つの回転移動の合成については次の定理が成り立つ.
命題3-4
平面上に四角形$ABCD$が4点$A,B,C,D$が右回り(時計まわり)に与えられている.
各頂点における回転
$S(A,\dfrac{\pi}{2}),S(B,\dfrac{\pi}{2}),S(C,\dfrac{\pi}{2}),S(D,\dfrac{\pi}{2})$
について次が成り立つ.
$S(D,\dfrac{\pi}{2})\circ S(C,\dfrac{\pi}{2})\circ S(B,\dfrac{\pi}{2})\circ S(A,\dfrac{\pi}{2})=$(恒等変換)
$\Longrightarrow$
$AC \bot BD , AC=BD$
証明
$S(B,\dfrac{\pi}{2})\circ S(A,\dfrac{\pi}{2})$および$S(D,\dfrac{\pi}{2})\circ S(C,\dfrac{\pi}{2})$
はそれぞれ回転角$\pi$の回転移動(点対称移動)であり,合成が恒等変換より,それぞれの回転の中心は
一致し,その点を$O$とする.
$\triangle OAB,\triangle OCD$はそれぞれ直角二等辺三角形より
$\triangle OAC$を$-\dfrac{\pi}{2}$回転移動すると$\triangle OBD$になる.
したがって
$AC \bot BD , AC=BD$
が成り立つ.
4.平行移動と回転移動の合成
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